ほぼほぼ、終わり。
新作怪談集のための未発表怪談、全29エピソードの原稿整理が、ほぼほぼ、ほぼほぼ。
お待たせしただけのことはあると思う。
発表できない間、闇の中でねっとり、じっとりと、発酵させ続けたせいもあろう。
怪談という共通言語を通じて出逢うことのできたさまざまな話者、お一人お一人から聞いた、不気味で「はあ!?」な怪異譚を、もう少しでみなさんにお届けできます。
乞うご期待。
とにもかくにも聖域にと欲した幽木。
ふと脳裏に浮かんだのが、埼玉県有数の神奈備――拝殿後背、標高約300メートルの御室ヶ嶽を神体山として祀る、埼玉県児玉郡は神川町の金鑚神社。
山がご神体。
長野の諏訪大社や、奈良の大神神社と同じである。
鬱蒼とした木々の中に静謐な佇まいを見せるここに、なぜか今日、私はまた手を合わせに来たいと思った。
平日なので、ちょっとした貸切状態。ありがたや。
ピリッとした神気をシャワーのように浴びながら、いざ、拝殿へ。
私です。
誰もいないのをいいことに、天津祝詞を奏上し、神様に再訪のご挨拶。
いろいろと思うこともあり、お神籤を引いて真意を尋ねると
「案ずるな。
あのな、お前が幸せだとしたら、それは神の恵みと祖先の守護によるものだ。
調子に乗ることなく、精進しろ。
今まで通りやれ。人の役に立て。
そうすれば、どんな嵐が来ようと、お前はずっと、幸せだ」
(幽木超訳)
とのお言葉。
このお神籤を戴くために、高速道路を使い、一時間半をかけてでも、私は神奈備を尋ねたのかも知れず。
さあ、帰ろう。
農協で、おいしい果物と野菜でも買って。
ちなみに金鑚神社は、武蔵国二宮でもあります。